哀悼!『青ちゃん新報』佐木隆三逝く!オウム裁判を追いかけた直木賞作家の生き様、ここに!「佐木隆三さん お別れの会」涙の報告!!

号外!青ちゃん新報2特別編

哀悼!佐木隆三逝く!オウム裁判を追いかけた直木賞作家の生き様、ここに!『佐木隆三さん お別れの会』涙の報告!!

 今月9日に北九州芸術劇場で行われた「佐木隆三さん お別れの会」に行ってきました。
 会の模様はちらほら報道もされていますが、その雑観と報告です。

 東京から北九州へは当日の空路で移動しました。
 同じ飛行機で、新潮社のお二人と、同社を辞められたノンフィクション作家さんといっしょになりました。
 いずれも、同じ会への出席が目的でした。

 開会は午後3時から。
 いったん新潮社の方々とは別れて、10分前には芸術劇場入口で受付を済ませました。
 ところが会場の小劇場はもう人でいっぱいで、中には入れませんでした。
 だから入口のところで、中の様子をのぞいていました。
 他にも中に入れない人たちが会場の外の廊下に並んで、式典のあとの献花の順番を待っていました。

 その列の中に朝日新聞の降幡賢一さんがいらっしゃいました。
 ずっとオウム裁判を取材されて、紙面に署名のコラムを書かれていた元編集委員の方です。全13巻からなる『オウム法廷』という書籍もあります。
 佐木さんもずっとオウム裁判を取材されていて、そこでいっしょになられました。もちろん、ぼくも同様です。
 そう言えば、降幡さんも佐木さんも、朝から傍聴券を求めて並んでいらっしゃいましたね。
 あの時と同じように、ずっと1時間くらい献花の順番を待って、会場の外で並ばれていました。
 そして、ご自身の順番が回ってくると、静かに献花を済ませられて、会場をあとにされていきました。
 あとで聞くと、そのまま新幹線に乗られて帰京されたそうです。
 佐木さんにお別れを言いに、献花の為だけに費やした長時間移動に、人を偲ぶ気持ちを知らされました。とても印象的な姿でした。

 佐木さんの人柄なのでしょうかね。それだけ人を惹きつける。
 そう言えば、会場には本村洋さんも姿をみせていました。
 光市母子殺害事件の差し戻し控訴審が広島高裁であった時には、毎日新聞の取材で北九州から佐木さんがいらしていました。そこで東京から向かったぼくとばったり会って……

http://aonumazezehihi.blog.fc2.com/blog-entry-141.html

 個人的には、いろいろ目をかけてくださって、いい思い出も沢山あるのですが、
 式典の挨拶に立たれた人の言葉や、献花に並んだ人たちの姿を見ていると、
 人それぞれに佐木さんへの思いがあるのだなあ、
 そういう関係と思い出を沢山つくってきた人だったんだなあ、と感じ入りました。

 ぼくは、最後に献花をさせていただいたのですが、
 そうした人たちの姿を見たあとだったこともあって、
 佐木さんの笑顔の遺影を正面に見たら泣けてきました。

 そのあとは、小学館やTBS、それに毎日新聞の地元支局の方々とごいっしょさせていただきました。
 お酒の大好きだった佐木さんがよく通われたという、小倉の街のお店をまわっての献杯です。
 佐木さんがオウム裁判の連載を『週刊ポスト』に、解説をTBSの報道でなされていたことから、当時のご担当の方がいらしていました。
 献杯をしつつ、みんなでいろんな話をしました。やっぱりオウム裁判取材の話題が多かったかな。
 それだけ大きな事件でしたし、時間を共有することも多かったから。

 そこで、同席された方々の話を聞いていると、佐木さんのこともさることながら、こうして集まった人たちにも関心がいきました。
 みんな市井を大切にする人たちばかりだったように思います。
 朝日新聞の降幡さんも含めて、大雑把に言えば、義理や人情を大切にするというか、人として一本筋を通すというか……。
 だから、食らい付いた継続的な取材もできたのだと思う。みんながそれを支えた。だけど、いまはどうだろう?
 そこへいくと、仕事の都合や、情報が届かなかったこともあるのだろうけれど、あるべき人の顔がなかったことも残念。というよりは、腑に落ちなかった。
 こういうところに人柄や人格がでるのかな、とも思いましたが、きっと佐木さんだったら、あの遺影のような笑顔で、

「まあ、そんなことは、いいじゃあないですか!」

 と、笑って済ましていたことでしょう。
 訪ねたお店でも、みんな佐木さんのことをよく知っていて、
 あれやこれや語りました。飲み尽くしました。
 人のいい面ばかりが心に染みました。
 とてもいい「お別れの会」でした。

 そして、その日の夜。
 直木賞作家の野坂昭如さんが亡くなられました。
 佐木さんが自身の原爆体験を語り、そこにイラストレーターの黒田征太郎さんが絵を描かれた絵本があります。その絵本に佐木さんがぼく宛にサインをされて送ってくださり、いまも手元にあります。
 ちょうど、「お別れの会」で挨拶に立たれていたその黒田征太郎さんが、佐木さんとの出会いを「野坂昭如に紹介された」と語っていたばかりでした。
 かつて、佐木さんが『笑っていいとも!』という番組で、お友達をつなぐ「テレフォンショッキング」というコーナーに登場されたのも、野坂昭如さんからの紹介によるものでした。
 なんだか、とても不思議な気分になりました。
 もし、仮に〝あの世〟というものがあるのだとしたら、いまごろ佐木さんには酒飲み友達が増えているのだろうな。それも、古くから馴染みの。


「佐木隆三さん お別れの会」①  「佐木隆三さん お別れの会」②  佐木隆三さんのサイン
※写真はクリックすると拡大します!

スポンサーサイト

いま再び!『青ちゃん新報』弁護人、裁判員を脅す! 牽強付会な弁論で、高橋克也被告の裁判結審。なんなんだ!? この裁判……。

復刻!青ちゃん新報2番外編

弁護人、裁判員を脅す! 牽強付会な弁論で、高橋克也被告の裁判結審。なんなんだ!? この裁判……。

 最後のオウム裁判、高橋克也被告の一審審理が結審した。
 4月1日、東京地方裁判所104号法廷。午前10時から弁護人の弁論がはじまった。
 主任弁護人が証言台の前に立ち、法壇の上に並んだ裁判員を見渡してから、堂々と語りはじめる。
 その眼鏡といい、白髪交じりの髪といい、髭といい、まるで宮崎駿を彷彿とさせる(いや、そっくり!)の弁護人の開口一番。

「みなさん。人間の記憶は不完全です。人の記憶はもろい。あてになりません……」
 つまり、20年前のことを証言した共犯者たちの記憶の不確かさを強調するところからはじめて、証言があてにならないことを強調しはじめたのだ。
 それで高橋被告の主張の正当性をうったえたかったらしい。
 だけど、そもそも高橋克也の記憶だってあてにならないし、まして、事件から顔を背けた17年間の逃亡生活の中で、自分に都合の悪いことは、記憶から消したり、作りかえているんじゃないのか!?
 高橋の記憶にこそ疑問の余地がある。被告人にとっても不利になる。
 おもいっきり諸刃の剣の主張をはじめる。

 その弁論の中で、井上証言の嘘や、中川証言に信用性のないことを主張するのだが、これがどうにも牽強付会。
 例えば、地下鉄サリン事件に関する井上証言について。
 井上は自分の責任を他の共犯者に転嫁したい。現場指揮者ではなくて、ただの伝達役だったと過小に自分を評価したい。だから、嘘をつくのだ、と弁護人はいう。なるほど、それはあるかも知れない。ところが、そのあとに続く主張が、だから、高橋克也に地下鉄にサリンを撒くことを伝えた、という井上の証言も嘘だ、というもの。弁護人は、高橋は地下鉄にサリンを撒くことは知らなかったと主張している。
 現場指揮者で、しかもその井上の直属の部下であった高橋ともなれば、なおさらサリン散布の計画を伝えた可能性のほうが高いでしょうに!

 VX事件にしても、そう。例えば、浜口事件。
 弁護側は首謀者を含めた実行部隊の殺意を否認。ポアするつもりはなく、教祖の指示に従っただけ、麻原が「ほっ、ほっ、ぴゅっ!」(ジョギングのふりをして近づき、後ろからVXをかける)でやれ、といったやり方を、実行したに過ぎない、と主張するのだけれど、結局それも、柔道場に通う浜口さんのゲタにVXを塗っておくとか、電車内でかけるとか、積極的に実行の仕方を話合った挙げ句に、他にいい方法もなく、尊師のいったとおりにしよう、と議論が戻っただけの話で、その間をすっぽり落として、筋道を立てている。
 やれやれ……。

 そもそも、この高橋の弁護人。1月16日の初公判の冒頭陳述で、この日と同じように裁判員を見渡してから、こういう言葉から口火を切っている。

「みなさん。人は死にます。必ず死にます。私も含めて、この法廷にいる人で50年後に生きている人は半分もいない……」

 もう、裁判員を脅すところからはじまっている。本人にその意識がないにしても、死を意識づけるところ、そして恐怖を煽るところ、カルトと呼ばれる集団の〝強迫の構図〟に酷似するものがある。
 オウムに入信した高橋の心理と同調させたかった狙いがあるのだろうが、もっと他の言い方もあるだろうし、もはやその手法をとったところでカルトだ。

 そして、終日に亘ったこの日の弁論の締めくくり。
「最後に、私の恩師から聞いた昔話をします」
 そう言って語った主任弁護人の〝説法〟。
 昔、ある村に、スズメ捕りの名人がいた。この老人は、なんでも知っていた。その鼻を明かしてやろうと、悪ガキが計画を立てた。スズメを捕まえて手に握って、老人の前に差し出す。そして、尋ねる。このスズメは、生きているのか、死んでいるのか。生きている、と答えたら手の中でスズメを握り殺す。死んでいる、と答えたら手を開いてスズメを飛ばす。その計画を実行にした。その時、老人はこういった。スズメは君の手の中にいるんだよ。……と、そこまで話して弁護人はこう締めくくった。

「高橋克也さんは、いま、みなさんの手の中にいます! ありがとうございました!」

 なんなんだ!? この弁論! 最後まで裁判員を脅しているようにしか見えない。
 裁判員制度で、こんな手法がありなのか!?

 10年前、20年前のオウム裁判、それも地下鉄サリン事件の審理と、明らかに変わってしまった。
 こんな裁判の在り方で、いいのだろうか。
 そして、こんな審理でオウム事件が終結していく。
 これで本当にいいのだろうか。

 甚だ疑問である。


吐き捨て御免!『青ちゃん新報』高橋克也のほくそ笑む顔が浮かぶ! 求刑無期懲役! 従属的なら何人殺しても許されるのか!? なんなんだ? このヘボ裁判! こんなにテロに甘い国があるか!

復刻!青ちゃん新報2 番外編

高橋克也のほくそ笑む顔が浮かぶ!求刑無期懲役!従属的なら何人殺しても許されるのか!?なんなんだ?このヘボ裁判!こんなにテロに甘い国があるか!

「そして、求刑ですが……」

 検察官がそう言った瞬間から、被告人席に座った高橋克也被告は肘をついた右手の拳で右側の小鼻を強く押しはじめた。鼻の頭が赤くなる。襲い来る重圧に堪えられない、そんな様子で。
 3月31日午前10時より東京地方裁判所104号法廷ではじまった高橋克也被告の裁判。
 この日はまず、VX事件で殺された浜口さんの遺族(父親)の意見書の朗読からはじまった。
「こちらのためにすることがあるとするなら、腹を切って死んでもらいたい」
 遺族感情はそういう文言で結ばれている。
 そして、その直後から検察側の論告がはじまった。
 高橋被告が起訴された事件は、時系列的にこの5つ。

・VX事件シリーズ(浜口事件・永岡事件) 死者1名 受傷者1名
・目黒公証役場事務長拉致監禁事件(仮谷事件) 死者1名
・地下鉄サリン事件 死者12名 受傷者14名(※起訴状による)
・東京都庁郵便物爆破事件 受傷者1名

 検察側はその事件のひとつひとつに共謀と殺意があったことを認めていく。
 特に、地下鉄に撒かれるものがサリンであることを事前に知っていたことや、VXが猛毒の化学兵器と認識していたことを、ひとつひとつ論証していく。
 高橋被告は14名の尊い命を奪ったことになる。
 しかも、地下鉄サリン事件があったのちに、東京都知事宛に送りつける爆弾の発火装置を自ら作り、爆弾を製作したことを重要視。
 その上で、いまでも麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚をグル(宗教的指導者)と崇め、再びテロ行為に及ぶことも十分に考えられる。
 だから……、

「死刑!」

 と、来た瞬間、法廷内には緊張が走ったのだが、ところが検察官はそのまま続けて、
「……をもって臨むことがもっともであるとしても、死刑と無期懲役との間には重大な壁があり……」
 と、たちまち拍子抜け。
 そして、高橋被告の役割について、
「上司に従って従属的に役割を務めた」
「実行役とは立場が違う」
「検察官として死刑を求刑するには躊躇いを感じる」
「運転手役の大半が無期懲役になっている」
 ことを主な理由に、

「 無期懲役 に処するを相当とします」
 ……だって。

 その時、もう既に高橋克也被告の顔は落ち着きを取り戻していた。
 赤かった鼻の頭は既になく、安堵した様子をどこかで誤魔化すように大きく息を吐く。

 いったい、なんなんだ!? この裁判!

 運転手役でも、坂本事件や松本サリン事件など教団の全ての殺害事件に関与した新實智光は別としても、あとの3人は確かに無期懲役になっている。
 だけど、杉本繁郎は地下鉄サリン事件の他に2つのリンチ殺害事件に関与して、高橋と同じ合計14名を殺害。うち1件の事件については直接信者の首を絞めている。この事件については「自首」を検察側が認めて死刑を求刑しなかった。
 あとの北村浩一外崎清隆については、運転手役を務めた地下鉄サリン事件の犠牲者12人の共同共謀正犯。それで無期懲役。

 しかし、高橋は違うだろう!
 VX事件においては「麻原に選ばれた暗殺部隊の一員」とまで論告の中で評されているし、
 地下鉄サリン事件においては、実行役たちを出撃拠点だった〝渋谷アジト〟まで案内してカギの管理までしているし、
 送迎車5台のうちの4台を手配している重要な役割を務めている。
 しかも都庁職員の手を吹っ飛ばす爆弾までつくっているんだぞ!

「従属的」であれば、何人殺しても、どれだけの人を傷つけても許されるのか!?
 だいたい「従属的」っていうけど、そんなことを言い出したら、麻原以外はみんな従属的だろう。
「実行犯とは立場が違う」というのなら、横山真人なんて担当路線でひとりも殺してない。自分の手で誰も殺してない。
 その横山は死刑になったし、横山を送迎した外崎は前述のように地下鉄サリン事件の犠牲者12人の責任を負って無期懲役。高橋のほうが2人も多い。

 どこか、歪んでいる気がする。

 死刑を免れて、いまごろほくそ笑んでいる高橋の顔が浮かぶ。
 してやったり!だろうな……。

 論告の中には、昨今の世界のテロについて触れる文言もあったけれど、これほどテロに甘い国もないように思う。

 それともうひとつ。
 今回の裁判では、遺族の処罰感情が明らかにされなかった。
 どのような刑を望むのか、遺族が明らかにしない。あるいは、できない。
 裁判員制度の導入によって、そうしたことに触れなくなったというが、その制度の弊害か。
 それ以上に、死刑求刑で裁判員の負担を大きくしたくない、という別の思惑が隠されているのではないか? そう疑いたくなる。
 なんなんだ!? この裁判!

 かつての裁判では、こうしたことが行われていた事実を以下に掲げてみたい。
 どうしても昔の裁判と違う気がしてならない。
 制度が変わるまで逃げおおせた高橋克也が〝得〟しているように思えてならない。
 裁判員制度そのものが、市民感覚の導入、被害者感情の反映が求められていたものだったのではなかったのか。


『青ちゃん新報』プレイバック!(※画像はクリックすると拡大します!)
『青ちゃん新報』1997年6月25日号 『青ちゃん新報』1997年4月18日号 『青ちゃん新報』1997年2月24日号 『青ちゃん新報』1996年11月6日号 


復刻!『青ちゃん新報』劣悪!高橋克也被告……なんなんだ!?この裁判?

復刻!青ちゃん新報2番外編

高橋克也被告の裁判とは……

 17年間の逃亡の末に逮捕され、いま法廷の場に立っている高橋克也被告。
 今春で20年を向かえた地下鉄サリン事件を裁判員が裁くということでも注目を集めているが、

 これまで見てきた地下鉄サリン事件の実行グループのなかでも、もっとも劣悪!

 良心の欠片すらない!

 この裁判については、然るべき時に然るべきところで振り返ってみたいと考えていますが、どうしてもいまのうちに伝えておきたいことだけ。

 先週月曜日から4日間に亘って行われた被告人質問。
 地下鉄サリン事件において、「サリンを撒くとは知らなかった」と無罪を主張している。それはそれでいいとしても、当時のことを訊かれると「記憶にない」を連発。
 そもそも、17年も捕まらなかったとはいえ、自分の関与した事件、それも13人もの死者を出した事件で(高橋被告は死者数を12人と答えていた)、「記憶にない」「忘れた」を連呼するあたり、20年間まったく事件と向き合っていなかった、ということであって、こんなに不誠実な態度があるだろうか。
 少なくとも、他の地下鉄サリン事件の実行犯や送迎役だって、もっと真摯に事件と向き合っていた!
 17年の逃亡が事件と向き合う機会を失ったり、記憶の抹消に結びついているのだとしたら、それこそ逃げたもの勝ちだ!

 そもそもこの裁判、以前の同事件の裁判に比べて、緩い。追及が甘い。
 裁判員制度の影響もあるのかも知れないが、過去に比べて緩すぎる。
 東京の地下鉄に化学兵器を撒いた未曾有のテロ事件の裁判なんだぞ!

 そこに加えて、被害者が寛容になった。
 20年の年月がそうさせたのかも知れない。心の傷が少しでも癒えていくこと、それはとても大切なことだと思う。むしろ歓迎したいことだ。
 だけど、高橋克也が逃亡中にあった同事件の裁判では、被害者感情はもっと辛辣だったはずだ。
「サリンを作った両手を切り落としてくだい」
「あなたと同じ世界には住めません」
「極刑を望みます」
 かつては、そんな言葉が法廷に響いていた。
 高橋克也の法廷でも、遺族の意見陳述はあって、みんな涙を流していたが、「極刑を望む」「死刑にしてください」なんて言葉一切なかった。
 被害者参加人制度による高橋克也への直接尋問も、気を遣ったように優しかった。
 計り知れない痛みや苦しみを体験して、そしていまもその中にある人たちだからこそ、人に対して寛容になれるのだろう。

 だからこそ、その優しさに甘えているようにみえる高橋克也の下劣さに嫌悪感すら覚える。
 20年近くを逃げおおせて、事件と向き合おうともせずに、いままた遺族の寛容の中に逃げ込もうとしている態度。
 20年の歳月が被害者、遺族の感情に変化をおこさせのだとしたら、やはり逃げたものに有益となる。
 実行グループの中で、もっとも悪質に思える。
 17年間も一般社会の中に紛れ込んで生活していて、いまさらマインドコントロールなんかで言い訳できるレベルにもない。

いよいよ求刑、結審だが……
 3月31日(火)には、求刑がなされます。
 これまで、地下鉄サリン事件の送迎役は新實智光を除いて全員が無期懲役になっています。求刑からそうです。
 新實は、この事件の他に、坂本事件や松本サリン事件の実行にも加わり、教団の犯した殺人事件に全て関わっているので死刑となりました。
 一方、林泰男を送迎した杉本繁郎は、同事件の他にリンチ殺害事件2件に関与しています。地下鉄サリン事件を含めると、殺人罪の起訴は3件。被害者は15名。ですが、リンチ事件のうち信者の首を絞めて殺害した事件において「自首」が認められて、検察側は死刑を求刑しませんでした。
 あとの2人、外崎清隆と北村浩一は地下鉄サリン事件の他に人の命を奪ったものはなく(北村は遺体焼却には関与している)、事件における役割からしても、極刑を免れたものでした。
 また、実行役においては、林郁夫が同事件の「自首」が認められて死刑回避。仮谷事件にも関与していて、担当路線の死者2名を含めて合計3人の命を奪っているというのに。
 そうかと思うと、丸ノ内線でサリンを撒いた横山真人は、担当路線でもひとりも殺していないのに死刑。共同共謀正犯として、無期懲役になった林郁夫の罪を被っていることになります。
 さて、高橋克也はといえば、地下鉄サリン事件の他に、仮谷事件で仮谷さんをワゴン車に押し込んでいますし、遺体の焼却にも関与しています。
 その前には、VX事件シリーズで浜口さんを殺害。この時は見張り役でしたが、次の永岡さんには滴下実行役の隣に立ってサポートしています。幸い永岡さんは死には至っていませんが、重度の傷害を負わせています。
 地下鉄サリン事件の他にも2人の命を奪っている高橋克也被告。

 求刑は 極刑 でしょう。

 そうでなければ、おかしいと思う。



再び!『青ちゃん新報』過去に置いて来たいもの 2014年5月20日

再び!青ちゃん新報2電子版

パソコン遠隔操作事件と菊地直子被告の共通点
 急転直下〝真犯人〟と認めざるを得なくなったパソコン遠隔操作事件の片山祐輔被告。誰だぁ〜!? 奇をてらって、いっしょになって無罪支援の片棒を担ぐような論調を張っていた似非ジャーナリストは……。全国ニュースで「なぜこんなことをしたのか、彼の心理を探っていきたい」「こういうことがないように学習していきたい」なんて、よくぬけぬけといえたものですね。眼識がなかった上に、結果的に犯罪者まで取り逃がそうとしていた所行。恥はかき捨てとは言いますが、本当に〝恥〟というものを知らない。
 それにしても、きっかけは真犯人を偽装したメールを自動送信した携帯電話を荒川河川敷に埋めていた片山被告の行動を捜査員が目撃していたことでしたが、実際には保釈中の彼の動向をずっと尾行していたのでしょう。恐ろしいばかりの監視能力というか、捜査の執念というか……。ひょっとしたら盗聴あたりもやっていたのかな。
 そのいわば〝国家権力〟の監視能力の恐ろしさは、いま東京地方裁判所で審理が続けられている菊地直子被告の公判でも裏付けられています。
 菊地被告が起訴されているのは、いまから19年前に地下鉄サリン事件が発生し、その2日後にオウム真理教教団施設に一斉家宅捜索が入り、そして教祖の麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚の逮捕を免れるべく、捜査攪乱を目的として、東京都知事宛に手製の爆弾を仕掛けた郵便小包を送った、その爆薬の原料となる薬品を山梨県上九一色村(当時)の教団施設から東京都八王子市内のアジトに運んだ、というもの。
 このアジトとなったマンションの一室には、井上嘉浩死刑囚や中川智正死刑囚などが潜んでいて、ここで爆薬や爆弾を製造しています。それどころか、未遂に終わったとはいえ、この同時期に新宿駅地下街の公衆トイレに青酸ガス発生装置を仕掛けた事件も、この八王子のアジトを拠点に行われています。
 で、いまの裁判で驚かされるのは、この八王子のアジトに薬品を持って運び込む当時の菊地直子被告の姿や、青酸ガス発生装置を持って新宿に〝出撃〟する中川智正死刑囚をはじめ、マンションに出入りする信者たちの姿を全部写真に撮っていて、それが証拠として取り扱われていること。
 いまの姿からは結びつかない、爽やかな女性らしい服装で薬品を運び込む若かりし日の菊地被告の写真なんて、東京地裁第104号法廷の大型モニターにバッチリ映し出されています。それも1枚どころか、何枚も。
 ここまでわかっていたのなら、都庁爆弾事件で都の職員が片手の指を全部失う大怪我をすることもなかったなんじゃないのかな。事件は未然に防げたのではないのか……なんて思ってしまいます。それくらいしっかりと彼らの動向を監視していたのですから。恐ろしいものです。
 でも、そこからまた菊地直子や高橋克也を取り逃してしまうのだから、これまたなにをしているのかよくわからなくなる。


混沌とする20年前の記憶と
もうひとりの犯罪被害者

 その菊地直子被告のこの日の公判では、クシティガルバ棟で土谷正実死刑囚のもと、いっしょにワークをしていたという元女性信者が証人出廷。彼女はサリンや覚醒剤を生成したとして、懲役3年6月の刑に服し、既に社会復帰しています。
 ですが、この女性。検察官の主尋問にも「うーん……」と唸って言葉を詰まらせ、当時のクシティガルバ棟の実態や、被告人をはじめとする他の信者たちとの関係を「覚えていない」「わからない」と連発。
 教団施設内でサリンを生成した20年前のことを事細かく思い出せ、というのも無理があるのかもしれませんが、それにしても、薄れ行く記憶の勢いというものは凄まじいものがあります。
 当時の菊地直子の姿を映した写真は、昨日のように色鮮やかに残っているというに。
 いや、それでも、淡々としながら、言葉に窮して記憶を呼び起こせないでいる証人の言動は、さすがに意図的に過去を忘却の彼方へ押しやろうとしているようにすら見えます。イヤな思い出をかき消すように。
 淡々としながら、どこか突き放したような口調も気になります。これで証人としての、証拠能力があるのか、心配にすらなってきたとき、検察官が最後に訊ねました。
「あなたは、今回、あまり裁判に関わりたくない、という気持ちがあるのではないですか」
 裁判員の前で証人が答えます。
「それは、いま、あります」
 そして、証人テストもろくにできず、しかも過去の記憶を呼び起こすことのできない理由。
「プライベートが忙しくて、思い出すことができません」
 差し支えなければその事情を教えてください、と検察官が訊ねると、
「…………」
 彼女は再び言葉に詰まって黙ってしまいました。
 だから、検察官が補います。
 身内の方の看病で忙しいのですね。
「……そうです」
 いまも重い病気で……。
「はい」
 証人テストもできない状況ですね。
「はい」
 いまも、イヤだという思いはありますか?
「それは、あります」
 社会復帰後は、家庭も持っているのですね。
「はい」
 その中には、証人の昔のことを知らない人もいる。
「はい」
 被告人を前にして、不利なことを言いたくない、という気持ちもありますか。
「それは、あんまりないかもしれない」
 被告人が逮捕されたと聞いてどう思いましたか?
「…………」
 うまく言葉が出ませんか。
「あまり、言いたくありません!」

 サリンを生成したとして処罰され、社会復帰後は新しい家庭を持った。
 いまは身内の看病に勤しみながら、過去を振り返ることに躊躇する。
 この女性が、教団施設一斉家宅捜索後の騒ぎのなかで、背後から包丁で刺されて死んだ村井秀夫元幹部の妻であったことをどれだけの人が知っていたでしょうか。

 いったい彼女は、みんなに平等な時間の流れのなかで、なにを思い、なにを考え、そして、なにを忘れ、なにを乗り越えてきたのか。
 彼女自身の法廷でも、いっしょに入信出家した、かつての夫の死については、今日と同じようにほとんどなにも語らないままに終わっています。

 オウム真理教の引き起こした事件で亡くなった方のご遺族の姿を思い浮かべてみる。
 そして、20年前の姿からは想像もつかないほどに変容した被告人の姿を眺めてみる。
 やはりぼくにはよくわからない、混沌としたものだけが残る。

 その彼女が、サリン生成に携わるきっかけとなったクシティガルバ棟への異動の経緯について訊ねられたとき、
「村井秀夫に、それまでいた部署からすぐに異動するように言われて……」
 そう呼び捨てにしていました。
 彼女にしてみたら、かつての夫の死すら、過去に置いて来たいものだったのかも知れません。



オウム裁判傍笑記 www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094026979
『オウム裁判傍笑記』5月16日電子書籍化配信中です!

プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR