吐き捨て御免!『青ちゃん新報』高橋克也のほくそ笑む顔が浮かぶ! 求刑無期懲役! 従属的なら何人殺しても許されるのか!? なんなんだ? このヘボ裁判! こんなにテロに甘い国があるか!

復刻!青ちゃん新報2 番外編

高橋克也のほくそ笑む顔が浮かぶ!求刑無期懲役!従属的なら何人殺しても許されるのか!?なんなんだ?このヘボ裁判!こんなにテロに甘い国があるか!

「そして、求刑ですが……」

 検察官がそう言った瞬間から、被告人席に座った高橋克也被告は肘をついた右手の拳で右側の小鼻を強く押しはじめた。鼻の頭が赤くなる。襲い来る重圧に堪えられない、そんな様子で。
 3月31日午前10時より東京地方裁判所104号法廷ではじまった高橋克也被告の裁判。
 この日はまず、VX事件で殺された浜口さんの遺族(父親)の意見書の朗読からはじまった。
「こちらのためにすることがあるとするなら、腹を切って死んでもらいたい」
 遺族感情はそういう文言で結ばれている。
 そして、その直後から検察側の論告がはじまった。
 高橋被告が起訴された事件は、時系列的にこの5つ。

・VX事件シリーズ(浜口事件・永岡事件) 死者1名 受傷者1名
・目黒公証役場事務長拉致監禁事件(仮谷事件) 死者1名
・地下鉄サリン事件 死者12名 受傷者14名(※起訴状による)
・東京都庁郵便物爆破事件 受傷者1名

 検察側はその事件のひとつひとつに共謀と殺意があったことを認めていく。
 特に、地下鉄に撒かれるものがサリンであることを事前に知っていたことや、VXが猛毒の化学兵器と認識していたことを、ひとつひとつ論証していく。
 高橋被告は14名の尊い命を奪ったことになる。
 しかも、地下鉄サリン事件があったのちに、東京都知事宛に送りつける爆弾の発火装置を自ら作り、爆弾を製作したことを重要視。
 その上で、いまでも麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚をグル(宗教的指導者)と崇め、再びテロ行為に及ぶことも十分に考えられる。
 だから……、

「死刑!」

 と、来た瞬間、法廷内には緊張が走ったのだが、ところが検察官はそのまま続けて、
「……をもって臨むことがもっともであるとしても、死刑と無期懲役との間には重大な壁があり……」
 と、たちまち拍子抜け。
 そして、高橋被告の役割について、
「上司に従って従属的に役割を務めた」
「実行役とは立場が違う」
「検察官として死刑を求刑するには躊躇いを感じる」
「運転手役の大半が無期懲役になっている」
 ことを主な理由に、

「 無期懲役 に処するを相当とします」
 ……だって。

 その時、もう既に高橋克也被告の顔は落ち着きを取り戻していた。
 赤かった鼻の頭は既になく、安堵した様子をどこかで誤魔化すように大きく息を吐く。

 いったい、なんなんだ!? この裁判!

 運転手役でも、坂本事件や松本サリン事件など教団の全ての殺害事件に関与した新實智光は別としても、あとの3人は確かに無期懲役になっている。
 だけど、杉本繁郎は地下鉄サリン事件の他に2つのリンチ殺害事件に関与して、高橋と同じ合計14名を殺害。うち1件の事件については直接信者の首を絞めている。この事件については「自首」を検察側が認めて死刑を求刑しなかった。
 あとの北村浩一外崎清隆については、運転手役を務めた地下鉄サリン事件の犠牲者12人の共同共謀正犯。それで無期懲役。

 しかし、高橋は違うだろう!
 VX事件においては「麻原に選ばれた暗殺部隊の一員」とまで論告の中で評されているし、
 地下鉄サリン事件においては、実行役たちを出撃拠点だった〝渋谷アジト〟まで案内してカギの管理までしているし、
 送迎車5台のうちの4台を手配している重要な役割を務めている。
 しかも都庁職員の手を吹っ飛ばす爆弾までつくっているんだぞ!

「従属的」であれば、何人殺しても、どれだけの人を傷つけても許されるのか!?
 だいたい「従属的」っていうけど、そんなことを言い出したら、麻原以外はみんな従属的だろう。
「実行犯とは立場が違う」というのなら、横山真人なんて担当路線でひとりも殺してない。自分の手で誰も殺してない。
 その横山は死刑になったし、横山を送迎した外崎は前述のように地下鉄サリン事件の犠牲者12人の責任を負って無期懲役。高橋のほうが2人も多い。

 どこか、歪んでいる気がする。

 死刑を免れて、いまごろほくそ笑んでいる高橋の顔が浮かぶ。
 してやったり!だろうな……。

 論告の中には、昨今の世界のテロについて触れる文言もあったけれど、これほどテロに甘い国もないように思う。

 それともうひとつ。
 今回の裁判では、遺族の処罰感情が明らかにされなかった。
 どのような刑を望むのか、遺族が明らかにしない。あるいは、できない。
 裁判員制度の導入によって、そうしたことに触れなくなったというが、その制度の弊害か。
 それ以上に、死刑求刑で裁判員の負担を大きくしたくない、という別の思惑が隠されているのではないか? そう疑いたくなる。
 なんなんだ!? この裁判!

 かつての裁判では、こうしたことが行われていた事実を以下に掲げてみたい。
 どうしても昔の裁判と違う気がしてならない。
 制度が変わるまで逃げおおせた高橋克也が〝得〟しているように思えてならない。
 裁判員制度そのものが、市民感覚の導入、被害者感情の反映が求められていたものだったのではなかったのか。


『青ちゃん新報』プレイバック!(※画像はクリックすると拡大します!)
『青ちゃん新報』1997年6月25日号 『青ちゃん新報』1997年4月18日号 『青ちゃん新報』1997年2月24日号 『青ちゃん新報』1996年11月6日号 


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No title

VXは水野事件含め3事件ですよ・・。
プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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