いま再び!『青ちゃん新報』弁護人、裁判員を脅す! 牽強付会な弁論で、高橋克也被告の裁判結審。なんなんだ!? この裁判……。

復刻!青ちゃん新報2番外編

弁護人、裁判員を脅す! 牽強付会な弁論で、高橋克也被告の裁判結審。なんなんだ!? この裁判……。

 最後のオウム裁判、高橋克也被告の一審審理が結審した。
 4月1日、東京地方裁判所104号法廷。午前10時から弁護人の弁論がはじまった。
 主任弁護人が証言台の前に立ち、法壇の上に並んだ裁判員を見渡してから、堂々と語りはじめる。
 その眼鏡といい、白髪交じりの髪といい、髭といい、まるで宮崎駿を彷彿とさせる(いや、そっくり!)の弁護人の開口一番。

「みなさん。人間の記憶は不完全です。人の記憶はもろい。あてになりません……」
 つまり、20年前のことを証言した共犯者たちの記憶の不確かさを強調するところからはじめて、証言があてにならないことを強調しはじめたのだ。
 それで高橋被告の主張の正当性をうったえたかったらしい。
 だけど、そもそも高橋克也の記憶だってあてにならないし、まして、事件から顔を背けた17年間の逃亡生活の中で、自分に都合の悪いことは、記憶から消したり、作りかえているんじゃないのか!?
 高橋の記憶にこそ疑問の余地がある。被告人にとっても不利になる。
 おもいっきり諸刃の剣の主張をはじめる。

 その弁論の中で、井上証言の嘘や、中川証言に信用性のないことを主張するのだが、これがどうにも牽強付会。
 例えば、地下鉄サリン事件に関する井上証言について。
 井上は自分の責任を他の共犯者に転嫁したい。現場指揮者ではなくて、ただの伝達役だったと過小に自分を評価したい。だから、嘘をつくのだ、と弁護人はいう。なるほど、それはあるかも知れない。ところが、そのあとに続く主張が、だから、高橋克也に地下鉄にサリンを撒くことを伝えた、という井上の証言も嘘だ、というもの。弁護人は、高橋は地下鉄にサリンを撒くことは知らなかったと主張している。
 現場指揮者で、しかもその井上の直属の部下であった高橋ともなれば、なおさらサリン散布の計画を伝えた可能性のほうが高いでしょうに!

 VX事件にしても、そう。例えば、浜口事件。
 弁護側は首謀者を含めた実行部隊の殺意を否認。ポアするつもりはなく、教祖の指示に従っただけ、麻原が「ほっ、ほっ、ぴゅっ!」(ジョギングのふりをして近づき、後ろからVXをかける)でやれ、といったやり方を、実行したに過ぎない、と主張するのだけれど、結局それも、柔道場に通う浜口さんのゲタにVXを塗っておくとか、電車内でかけるとか、積極的に実行の仕方を話合った挙げ句に、他にいい方法もなく、尊師のいったとおりにしよう、と議論が戻っただけの話で、その間をすっぽり落として、筋道を立てている。
 やれやれ……。

 そもそも、この高橋の弁護人。1月16日の初公判の冒頭陳述で、この日と同じように裁判員を見渡してから、こういう言葉から口火を切っている。

「みなさん。人は死にます。必ず死にます。私も含めて、この法廷にいる人で50年後に生きている人は半分もいない……」

 もう、裁判員を脅すところからはじまっている。本人にその意識がないにしても、死を意識づけるところ、そして恐怖を煽るところ、カルトと呼ばれる集団の〝強迫の構図〟に酷似するものがある。
 オウムに入信した高橋の心理と同調させたかった狙いがあるのだろうが、もっと他の言い方もあるだろうし、もはやその手法をとったところでカルトだ。

 そして、終日に亘ったこの日の弁論の締めくくり。
「最後に、私の恩師から聞いた昔話をします」
 そう言って語った主任弁護人の〝説法〟。
 昔、ある村に、スズメ捕りの名人がいた。この老人は、なんでも知っていた。その鼻を明かしてやろうと、悪ガキが計画を立てた。スズメを捕まえて手に握って、老人の前に差し出す。そして、尋ねる。このスズメは、生きているのか、死んでいるのか。生きている、と答えたら手の中でスズメを握り殺す。死んでいる、と答えたら手を開いてスズメを飛ばす。その計画を実行にした。その時、老人はこういった。スズメは君の手の中にいるんだよ。……と、そこまで話して弁護人はこう締めくくった。

「高橋克也さんは、いま、みなさんの手の中にいます! ありがとうございました!」

 なんなんだ!? この弁論! 最後まで裁判員を脅しているようにしか見えない。
 裁判員制度で、こんな手法がありなのか!?

 10年前、20年前のオウム裁判、それも地下鉄サリン事件の審理と、明らかに変わってしまった。
 こんな裁判の在り方で、いいのだろうか。
 そして、こんな審理でオウム事件が終結していく。
 これで本当にいいのだろうか。

 甚だ疑問である。


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プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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