最後のオウム裁判の一審が終了して思うこと

高橋克也被告に無期懲役
 大型連休前半の今週木曜日。高橋克也被告に無期懲役が言い渡されました。
 この最後のオウム裁判については、既に火曜日に発売された『週刊新潮』ゴールデンウィーク合併号に署名原稿を寄稿しています。
 合併号ですから、2週間は店頭に並んでいるはずです。

 それにしても、時間が経つにつれて、いろいろなことを考えさせられます。
 周辺事情や思うところを書き連ねてみます。

オウム裁判第2世代
 平田信、菊地直子、そして高橋克也と相次いで逮捕され、そして去年から公判が続くうちに、これらの裁判に足繁く通う人たち、それもぼくより若い女性が目立ちました。
 いわばオウム裁判通い第2世代といったところでしょうか。
 昔だったら、

「あたし〜、アオジョ、だからぁ〜」

 と、自称する〝アオジョ・ギャル〟というのが法廷を席巻することもありました。
 テレビにやたらに登場していた、教団の青○○○弁護士や、上祐史浩元幹部を追いかける若い女性たちです。
 やたらに香水の臭いのきつかった記憶があります。
 そういうマニアは次第に陰が消えて行き、それでも裁判所に通って、他のオウム被告人たちの裁判を覗く人たちも多かったのは事実です。
 今回はあの時とは違う顔の女の子たちが多かった。
 第2世代の彼女たちは、あらためてはじまったオウム裁判のどこに惹きつけられたのか、ちょっと不思議でした。

 いまになって、そのことをあらためて考えてみると、いったいこのぼくも、何に惹きつけられて裁判所にかよっていたのか、だんだんわからなくなってくる。
 つまらない話です。
 終わりのあるもの、ひとつの区切りに接した虚脱感なのかもしれませんが、振り返ってみると、もっと生産性の高いことができたかも知れないし、もっと違う自分がいまここにいたかも知れない。
 熱くなって出版社に抗議することもなかったかも知れない。
 果たして、自分のしてきたことが、世の中のためになっているのか、
 伝えて来たことが、誰かの役にたっていたのか。

歴史を歪める報道
 高橋克也被告の無期懲役判決を伝える報道を見ても、いまだに「VXガス」と書くメディアがある。
 犯行状況を正しく知れば、あれはどう考えたって「気体」ではない。滴下された「液体」です。
 サリンを「サリンガス」と書くのと同じ。
 正しく情報の伝わらないもどかしさがある。
 10年、20年前の報道ならば、どこもちゃんと「VX」と伝えていただろうに。
 こうして正しい歴史が歪められていくのでしょうね。
 そこに漂う無力感。

麻原彰晃と同質な偽善者
 報道腕章をして法廷に入り、傍聴席を確保している60歳手前の眼鏡をかけたオウムおばさん(あえて、そう呼ぶ)は、本来の報道媒体を通じての作業よりも、個人の情報発信に躍起になっている。
 そんな人物に報道席が確保されるのは筋違いではないのか?
 そもそも、オウムおばさんは、このひとつの区切りで、坂本堤弁護士とオウム真理教を結びつけた個人的事情をどう総括しているのだろうか。
 坂本弁護士の実母からも「恨みます」とはっきり公言されているのに。
 このおばさんは人を傷つけることに、かなり無頓着で(この傷は癒えることはないし、ぼくの周りにも被害者は沢山いる)、そういうところが麻原彰晃をはじめとする教団の体質と同じだと思う。
 因みに、このおばさんの最初の攻撃手法は「シカト」から入る。そのあたりもオウムとまったく同じだし、いじめ問題や教育問題を語るにあたらない。

 くだらないことをやって来たのか。
 そう思えるだけ、大人になったということか……。

麻原三女の手記に啞然
 そういえば、原稿を寄稿している同じ『週刊新潮』に、麻原の三女の手記について書かれている記事が載っていました。
 妹の四女が、その内容について虚偽であることを指摘しているとのこと。
 いろんな人から、その内容については問題が指摘されていますが、
 かつて、三女が大検を目指して予備校に通っている姿を写真に撮って、それを『FRIDAY』にぼくの署名原稿といっしょに載せたことがあります。
 もちろん、顔には目線を入れて。
 ところが、三女はこの出版元の講談社を訴えてきた。
 それがどうでしょう! 三女の手記の表紙は、自らの顔写真を堂々と掲げ、しかも講談社から出版されているのですから!
 ぼくにしてみれば、呆れてモノも言えません。

三女の衝撃の発言
 その三女にまつわる法廷証言をひとつ。
 松本サリン事件の現場に同行したTという信者がいました。彼はこの事件で懲役17年の実刑判決を受けています。
 彼の証言によると、ちょうどこの頃、教団内で恋仲になった女性信者がいました。
 そこで、麻原に結婚の許可を申し出たところ、最初は麻原も承諾したそうですが、そのうちに気が変わりだし、こう言い放ったそうです。
「教団内で結婚していいのは、教祖の娘と結婚することだけだ。彼女に私の子どもを生ませて、その子どもと結婚させてやる」
 それを猛烈な勢いで「嫌だ!」と答えたそうですが、そのうちに教団内で女性信者が麻原とどういう関係にあるのかを知り、腐っていたところで、松本サリン事件の実行に加えられたそうです。
 そして、松本市内でサリンを撒いて教団施設に戻ってきた時のこと。
 頭の中は彼女のことでいっぱい。
 すぐに麻原と話をしたくて、そのまま第6サティアンの麻原が家族と暮らす居室に直行しました。
 居室に入ると、すぐに三女と遭遇します。
 その時に、三女が声を挙げて奥の麻原に送った言葉。

「あ! ○ー○師(彼のホーリーネーム)、まだ着替えてないよ!」

 このことについては、手記でも触れられていないようですね。
 まあ、こんな逸話を披露するくらいしか、役には立てないのかも知れませんけど……。

 そうして考えてみると、いつぞやは熱くなっていたオウム事件や裁判というものに、ぼくなりの総括ができていないが故の戸惑いなのかも知れませんね。
 本も出したし、アニメも作って来たけれど、いまここで区切りを付けるべき自分なりの〝答え〟を導き出せていないことへの苛立ちなのかも知れない。
 あらためて感じる自分の無力。
 よくないですね。
 まあ、オウム事件というのは大きすぎて、ひとつの答えなんてないのかも知れないけれど、いまいちど考え直してみる必要があるのかも知れませんね。

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プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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