全国で唯一「淫行条例」のなかった長野県と松本サリン事件

 全国で唯一「淫行条例」というものがなかったのが長野県でした。
 隠しても仕方ないので白状しますが、ぼくは長野県の出身です。
 そのぼくが学生時代から〝全国で唯一〟とされていたのですから、その長い歴史が知れるでしょう。
 それが、ついに県会議会で可決され、成立しました。
 7月1日のことでした。歴史的な転換です。

 〝教育県〟とも呼ばれた長野県ですが、いわゆる「淫行条例」がなかった代わりに、住民の力でそうした「淫らな行為」は廃絶されてきました。
 条例可決を伝える朝日新聞には、「県民運動」とも表現されています。

http://www.asahi.com/articles/ASJ715PYFJ71UOOB00N.html

 言い換えれば、不文律の中で大人たちが互いに潔癖を保つことを美徳としてきた県民性とも言えます。
 長野県人は頭が硬い、理屈っぽい、頑固、などとよく言われていたのも(実際にぼくが上京した頃はよくそう言われました)、その一面の現れでしょう。

 ところが、日本で最初にHIV感染者が確認されたのも長野県。
 それも、温泉街に滞在していたフィリピン人女性でした。
 だから、学生時代に友人から、こう言われたことをいまでも覚えています。
「アオヌマ、夏休みは帰郷するのか? お前の田舎は、海外に出るより危ないな、気をつけろよ!」

 いまもそうであるとは思うのですが、全国で唯一、いわゆるソープランドがないのも長野県。
 実は、かつて松本市にソープランドが開業したことがあります。
 ところが、これに地元住民が猛反発。
 デモやらなんやら、ものすごい抗議活動で、すぐに廃業に追い込んでしまいました。その地域から、追い出したのです。
 その模様は、当時の写真週刊誌にも報じられています。

 その近くにあったのが、オウム真理教の松本支部。
 これまたものすごい抗議活動で、追い出そうとしました。
 オウム側は徹底抗戦。
 住民側が支部施設の水道を使えなくしたら、オウム側は井戸を掘って対抗。
 今度は施設に通じる私道の使用を禁止しようと提訴。オウムは反訴。
 訴訟合戦を繰り広げた果てに、これが住民側に有利、敗訴しそうなことを危惧したオウム真理教が、性能実験を兼ねて、裁判官官舎を標的に、猛毒のサリンを撒いたのが、オウム三大事件のひとつ、松本サリン事件でした。

 あの事件から6月27日で22年。
 見てくれだけの美徳では済まない時代になったのでしょうか。


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プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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