復刻『青ちゃん新報』紙オムツ焼却事件発覚! 怒濤の同窓会法廷スタート! 2014年1月17日

電子版青ちゃん新報2復刻!


 今朝のワイドショーを見ていると、どこもかしこも昨日の平田信初公判を取り上げていた。そのなかに、青沼陽一郎氏の数日前のブログでも登場する〝オウムに詳しい〟とされる弁護士さんが登場しているものがあった。彼は平田信被告が罪に問われている目黒公証役場事務長拉致事件(仮谷事件)について、番組内でこう述べていた。
「もっと早くに仮谷さんの事件が解決していれば、地下鉄サリン事件は起きなかった。それだけ重要な事件」だって。……あのさぁ、地下鉄サリン事件の発端は、仮谷事件で教団施設に一斉家宅捜索が入ることが知れたところから、捜査の矛先を変えるべく慌ててサリンを生成しはじめたことにある。そんな解説、どうしたって無茶だろう! もういい加減に周りが気付いてやれよ! テレビに出したら不味いだろう! これじゃあ事件の風化どころか劣化が進んじゃう。
 その仮谷事件も含めて、平田信被告の公判審理は今日も進んだ。この日から、かつての朋友すなわち元オウム信者たちを招いての証人尋問がはじまった。
 ……が、その実態は審理というより、まるで同窓会。

怒濤の同窓会法廷スタート!
一番手はあの人の恋人

 午前10時。開廷間際に傍聴席からの視線を妨げるように、証言台に遮蔽の衝立が設置される。法廷内の証人の出入り口からこの衝立までもパーティションで仕切られ、まったく証人の姿を見ることができない。やがて、はじまる証人尋問。声からして女性であることはわかる。でも、いったい誰だ?
 そのうち、主尋問に立った検察官が、この証人が元オウム信者であることを確認し、そして「あなたのホーリーネームは○○○でしたね?」と訊ねて、ようやくこの人物の特定ができる。裁判所も本名を名乗らせず、かつての教団で使われていたホーリーネームで人定するなんて、ちょっとこの裁判もヘンだ。
 もっと傍聴人にも適正に公判手続きが進められているか、証拠を見せろ! チェックをさせろ! と、言いたくなる。
 この女性、かつて中川智正死刑囚と交際関係にあり、彼といっしょに教団へ入信、出家した人物。教団では、土谷正実死刑囚らのサリン生成の手伝いをしたことから、殺人予備の罪に問われて実刑判決を受けている。だけど、もうその契機もとっくの昔に終えて、いまは一般社会人として暮らしている。
 久々に聞く彼女の証言は、年月を重ねたせいか、とても斬新に聞こえる。
 彼女の証言の要旨は、仮谷事件が発生した直後の平成7(1995)年3月初旬こと。当時、彼女の生活していた第1サティアン3階の自室の窓から、外にある焼却炉を見てると、かつての恋人・中川智正と平田信被告が車を横付けして、なにかを焼却しているという。そこに違法性や犯罪性を見て取ったのは、部署が違うはずの中川と平田信がいっしょにいることが不思議に思えたことと、
「普通は焼却炉にゴミを放り込むとそのまま立ち去るのに、燃えるまでずっと見守っているから」
 なるほど、説得力がある。では、なぜ彼女は3階の窓からずっと焼却炉を見ていたか、というと、
「私のワークとして、第1サティアンから出た紙オムツを燃やすワークがある。人に見られないように燃やせ、といわれていたので、いつも周囲に人がいない時になるべく燃やす。だから、焼却炉に人がいないか確認するために見ていた」
 紙オムツ!? 人に見られず焼却処分する?

紙オムツ事件発覚!?
 ひょっとして、薬物イニシエーションに使ったオムツのことか、と思っていると、そうではなかった。
「第1サティアンに子どもがいることは伏せられていて、ばれてはいけない。紙オムツを燃やすときは私も燃え尽きるまで付き添う」
 で、この第1サティアンというのが、実は、
「教祖と正式に結婚していない女性たちとその間の子どもたちが生活する場所として使われていました」
 だから、子どもの存在も紙オムツの存在もばれてはならない。
 一説によると、正妻以外にサッカーチームができるほどの子どもがいた、というが……。
 紙オムツを燃やすのも教団の重要機密シークレットワークだった、ということ。
 中川も中川なら、かつての恋人も、いったいふたりで牽制しながらなにやってんだ!?
 教祖も教祖で、子どもの紙オムツの処分にもびびっているなんて。

中川智正 仮谷事件をはじめ、地下鉄・松本両サリン、坂本事件に関与した中川智正死刑囚

 この女性、かつての教祖の第一印象について、
「正直、むさ苦しいオッサンだな、というのが第一印象」
 そして、麻原章晃のことを最終的に凄いとも思わなくなったきっかけが、
「自分でサリンを作っていてヘンな話なんですけど、松本サリン事件が起きたときに、ヴァジラヤーナの教えというのがあって、この教義に従ったら殺人も肯定できる、だけど教団はヴァジラヤーナの教えに基づいてやったのではなく、一切を沈黙したんです。教団で、自分でサリンを作っていることわかるし、現実に起きたことと、教祖の言っていることかけ離れていると感じて、なんなんだろうと。その後、省庁制ができて、第1サティアンの部署に移されて、なにもないところで存在すら隠されている子どもたちの世話をして、あ、そういうことか、と。認識として、自分の都合のいいようにあらゆることを教義で語っていたんだな、いつか真実が明らかになればいいという感覚が出てきた」
 そして、
「自分の子どもですら責任をとれない人が、なんに対しても責任はとれないだろうな、と感じていた」
 と、きっぱり。それでも教団を出て行こうとしなかった理由について、
「居場所がないと思っていたから」「誰かを頼って出て行くと、その人に迷惑をかけると思っていた」
 サリンを作ったことについても、
「これが自分に与えられている仕事。それさえすればいい。あとのことは計り知れない能力や知恵を持っている人が判断することだと」
 近隣住民に迷惑をかけることについても、
「常識を考えるとヘンだし、まわりに迷惑だろうと、自分の中で葛藤があっても、周囲を見渡すとどうも辛いという人がいなくて、平然とした人がいる。何でだろうとまた葛藤する。自分の修行が足りないことだからと考えると葛藤が消えて、自分自身が楽になった。あー、もうこれでいこうと思ったんです」
 うーん……なんだか実社会、会社組織にあってもありそうなことのような気がするのは、気のせいかな。それともオウムだけが異常な空間だったのか。

 そこへ裁判員のひとりが訊いた。(これが裁判員のオウムに関する最初の質問だった!)
「あなたは教祖のことを、むさ苦しいオッサンの印象があったといいましたね。なのに出家したのはなぜなのですか?」
 その答え。
「当時、交際していた中川さんが出家を決意して、私はモヤモヤした気持ちがあって、仕事も面白くなってきていて、辞めたくないという気持ちもあって、中川さんに『独りで出家してください』と言ったんですけど、すると教祖や幹部と呼ばれる人たちがやって来て、『あなたがグズグズしているから、中川さんが出家できない。困るじゃないか』と言われて、私は普段の生活をしたい、でも私が足をひっぱていると言われるのも辛くて、それで〝エイ!やあ!〟と出家してしまった、それが正直なところです」
 やれやれ……。このおよそ2か月後に中川死刑囚は坂本事件に関与していくのだが……。

 平田信に逃走資金1000万円を渡したのも彼女。
 その彼女はもう十数年も前に刑期を終えて社会復帰。旧姓も変わっているのかな?
 一方の平田信被告は、1000万円の逃走資金からはじまって、17年の逃走生活を経て、いま法廷に立たされている。
 そして、今日、ふたりが再会している。彼女の発言も歳月の積み重ねがそう言わせるのか。

「助けて!助けて!助けて!」
その時、仮谷さんは3回叫んだ!

 午後になると、こんどは松本サリン事件や仮谷事件の実行役だった中村昇が出廷。無期懲役の服役中ながら、饒舌口調は相変わらずのもの。
 ここも20年近くを経ての再会。19年前の事件を語る。
 まあ、それにしてもあらためて証言を聞き直すと、拉致現場の様相は壮絶だよな。若い男たちが集団で60代後半の男性を目黒通りで車に無理矢理押し込んじゃうんだから。横断歩道をワゴン車が横付けで塞ぎ、スライドドアが開いたと思えば、仮谷さんは背後から抱きつかれて路上に倒される。それでも男たちが担ぎ込んじゃうんだから。
 中村証人は、平田被告に拉致の説明は事前にしている、というし、平田被告は聞いてないと主張するし……。
 まるで同窓会のような裁判は、どんな結末を迎えるのだろうか。

かつてのナカムラ服役囚。中村昇いまは頭を丸坊主にしていた。



(佐木さんも見ててくれるかな……?)


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プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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