復刻『青ちゃん新報』「現代のベートーベン」を生んだメディアの大罪!既存情報から耳を塞ぐオウム報道はペテンといっしょだ! 2014年2月7日

復刻!青ちゃん新報2電子版

 7日、東京地方裁判所では平田信被告の公判が開かれた。この日は、地下鉄サリン事件の前日に平田被告といっしょに〝運転手役〟を外されたある意味〝ラッキー!〟だったが、火炎瓶事件に借り出され、平田被告を現場まで車で送迎した○○さんが証人出廷。だが、特筆すべきこともないので、それよりも気になることについて__。

「現代のベートーベン」全聾の作曲家ペテン師を生んだメディア報道
それと同じ「オウム報道」の大罪を問う!!

「現代のベートーベン」とも呼ばれた全聾の作曲家のペテン話。実は、別人が作曲していた、本人は楽譜が書けない、本当は耳が聞こえている……まで、なんとも凄まじい話。
 どうも、人間というのは(あるいは、日本人というのは)、ハンディを持つ人の果敢な活躍ぶりに惹かれるところがあるらしい。日本特有のところで言えば、『座頭市』や『丹下左膳』なんていうチャンバラヒーローがもてはやされるのもそのひとつだし(個人的には、大河内傳次郎の丹下左膳がいいね!)、『浪人街』や『七人の侍』『用心棒』のように、見た目や立場は惨めでも、いざというときに発揮する力のギャップに魅了される。
 そう、麻原彰晃(本名・松本智津夫)なんて人も、目の見えないことを巧みに利用していたことは、まず間違いない。ハンディを乗り越えて悟りを開く、なんて凄い人なんだ!見た目は質素でも、本当は凄い力をもっているんだ!というところに妙な感動を覚えて近づいていった信者も少なくないはず。空中浮揚ができる、人の心を見通す超能力がある、魂を高い世界へ導く「ポア」ができる、神々の示唆が降りてくる……聴力がなくても「音が降りてくる」なんて、できもしない作曲を神格化していったところも、似ている。
 そして、そうした存在を持ち上げて、神格化に協力してしまう周辺環境の存在も、忘れてはならない重要な要素。
 教祖の場合は、周辺に熱烈な古参信者がいて、彼の超能力を吹聴し、いわゆる「折伏」によって、組織を拡大していったところも大きかったけど、やはりメディアの力も見逃せない重大因子。
 今回の全聾の作曲家ペテン師の話は、今週発売された『週刊文春』のスクープ。その本稿中には、彼を持ち上げた「NHKスペシャル」の記載もある。取材スタッフがずっと張り付いていたはずなのに、その本性を見抜けなかった。しかも、その間に、別人の作曲した楽譜が届いていたにもかかわらず。
 やっぱり、最近のNHKは、取材能力や検証能力に欠けて、どこかおかしい気がする。特に、このオウム事件に関しては。

NHKがおかしい
 いま、東京地方裁判所で開かれている平田信公判においても、ずっと以前にあったNHKの『おはようジャーナル』という番組で取り上げた特集のなかに、当時の井上嘉浩死刑囚と平田信被告が映っているものがあって、これを証拠採用したら、弁護人や裁判所に抗議しているという。どうして、抗議があるのか、よくわからない。それを放送しちゃっているのは、NHKなのに。不備があったのなら、まずそれを認めるべきでしょう。
 それから、同じ「NHKスペシャル」でいえば、オウム事件を取り上げた「未解決事件シリーズ」。あれは酷かった!
 その問題点については、ここに詳しいけど、

<ブログ>酷い!NHK「未解決事件シリーズ」の虚偽報道
http://aonumazezehihi.blog.fc2.com/blog-entry-40.html

 井上死刑囚から届いた手紙を得意気に取り上げて、「今回、NHKだけに」なんていいながら、地下鉄サリン事件のことを予言の成就と持ち上げていることを、そのまま放送しちゃっている。
 本当に出鱈目もいいところ! 地下鉄サリン事件は、事件の2日前のいわゆる「リムジン謀議」で発案されるのだけれど、このとき教祖から「アーナンダ(=井上)、なにかないか」と向けられた井上が「地下鉄に硫酸でも撒けばいいのではないでしょうか」と提案したことから、サリン撒布の話になっていく。他でもない井上自身が麻原公判で証言したことなんだから!
 それでもリムジンを降りた麻原が決行について「瞑想して考える」といって教団施設に戻っていったことから、井上は「ここでは謀議は成立していない」なんて言い張っているけど、結果的にはリムジン謀議で話し合われたことがそのまま実行されているんだから、詭弁だよ。
 しかも、そんなことは「NHKだけに」告白したことでもなんでもない。突然、思い付いたように、繰り返し法廷で述べていること。
 先日、平田公判にも出廷した井上は、再びこの持論を展開しはじめちゃって……。
 ところが、この「予言の成就」説を、また面白がったように新聞が大きく取り上げちゃっているから、もっと始末が悪い。
 本当に取材というものができていないのか、積み重ねができていないのか。検証能力すら失っている。
 しかも、どこのメディアもバカのひとつ覚えのように「オウムには謎が多い」だとか「平田裁判で謎が解けるか」なんて、連呼しているけど、いったいなにが謎なのか、そっちのほうが謎。そういっていれば済むと思っているんだろうな。いったいどこが謎なのか、明確にしてほしい。過去取材も振り返らないでほざいているだけだ。
 NHKの夜9時のニュース番組のキャスターは、全聾の作曲家に直接インタビューしておきながら「自分で作曲していないことを見抜けなかった」といって謝罪したそうだけど、その同じ口で「オウムには謎が残る」と喧伝している。
 そもそも、作曲家に「あなたが自分で作曲しているんですか?」なんて訊ねたら失礼に当たるし、よほどうまくやらないと、見抜く術はないだろう。
 そうではなくて、オウム事件というのは裁判で明らかになったことを検証すれば、「NHKスペシャル」のように間違いをひけらかすことはないだろうし、どこが謎なのかもっと細分化できるはずだ。ただ漠然と「謎が多い」とステレオタイプで喚き散らすのは、自らが既報された情報に耳を塞いでいることに等しい。それでもジャーナリストなのだろうか。

あえて耳を塞ぐ全聾メディアのペテン
 それともうひとつ、NHKでいえば、ラジオに森達也なんていう人を出演させていること。
 自著で「麻原は地下鉄サリン事件を指示していない」と明言している人物。しかも、そこに行き着くまでの論旨や記述には、明らかな間違いや嘘がやたらに多い。
 それが最近では「麻原が地下鉄にサリンを撒けといった動機がわからない」と言い出して平然としている。
 どうしたって、普通に考えれば〝頭のおかしい人〟だろう。そんな人を平田公判に合わせて、NHKラジオの報道番組に出演させてしまうのだから、文字通り〝おかしな電波〟が飛んでいるとしかいいようがない。
 結局のところ、「現代のベートーベン」をメディアがよってたかって作り上げてしまったように、オウム事件というものの本質を作り替えてしまうことに加担している、同じ罪を犯していることになる。
 まして、全聾の作曲家ペテン師なら、まだ人々を失望させるだけで、人の命が犠牲になることはない。
 だが、このオウム事件というのは人の命が奪われているだけに、より慎重にならなければならないはずなのに。それだけ罪は大きい。
 だからこそ、森達也の自著が大手出版社のノンフィクション賞を受賞したときには、抗議行動をおこしたのに。やっぱりこれは大罪に値するね。

<ブログの原点>抗議書 掲載
http://aonumazezehihi.blog.fc2.com/blog-entry-1.html

「現代のベートーベン」を作り上げちゃったことを詫びるのなら、いまいちどこの現実を見つめ直して欲しいな。
 そうでなければ、メディアや報道こそが全聾になったに等しい。
 そこから紡ぎ出される楽譜って、信頼できるのかしら……。



フクシマカタストロフ カバー・帯 http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163900148
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR