復刻『青ちゃん新報』♪雪はぁ〜 降るぅ〜〜 ♪あなたは来ない〜〜 バレンタインデーに振られた平田信の自業自得 2014年2月14日

復刻!青ちゃん新報2子版 

あれ?ハッピーバレンタインのはずが……
 ♪雪はぁ〜 降るぅ〜〜 ♪あなたは来ない〜〜
 ……って、アダモの名曲あるけど、本当に証人が来なかった。
 首都圏が朝から雪に見舞われた14日のバレンタインデー。東京地方裁判所では、雪にも負けず、予定通り平田信被告の裁判員裁判が開かれた。
 ところが、齊藤啓昭裁判長が午前10時に開廷を告げるやいなや、
「本日、取り調べの証人ですけど、出頭がありませんので取りやめといたします」
 それも、出廷できない理由というのが、生憎の雪によるものでもなんでもないのだ。
齊藤啓昭裁判長・法服 齊藤啓昭裁判長

 本来だったら、ある意味で今日は、とってもロマンチックなバレンタインデー(それも、〝ホワイトバレンタインデー〟)になるはずだった。  
 と、いうのも当初の予定では、この日に平田被告と約17年間の逃走生活を共にした元女性信者が証人として出廷するはずだったのだ。そうすれば、2011(平成23)年の大晦日に平田被告が出頭して以来の、2年1ヶ月と14日ぶりの再会が、まさにこのバレンタインデーの日に実現することになる。裁判所も、粋なことをやる!(もっとも、裁判所にバレンタインデーは関係ないが)と、思っていたら、予定が狂いはじめる。
 10日月曜日に出廷予定だった証人が、突如キャンセル。それで「内縁の夫婦」を自認する彼女が、代わって出廷し、再会を果たすどころか、平田公判の欠番をフォロー。さすが内助の功といったところか。
 代わって、この日、その証人が出廷するはずだったのだが……。
 その証人というのが、平田被告と同じ3事件で起訴され、しかも、仮谷事件においては、死亡した仮谷さんの遺体の首を絞めさせられた人物。それだけに、犯罪に手を染めさせるように仕向けていった教団に対する怒りも強く、彼自身の公判では証人出廷した共犯者のチャラチャラした態度がよほど気に入らなかったのか、「なに、笑ってんだよぉ〜!!」と被告人席からガンを飛ばして、裁判長や弁護人から諫められたほど。いまは刑期を終えて出所、社会復帰している。
 裁判長の言葉のあとに、弁護人が立ち上がって意見したところによると、「ある通信社」(としか弁護人は言わなかった)が、彼の証人出廷を知って、彼の現住所に手紙を書いて送った。で、これを受け取った証人が、早い話が、怖じ気づいて証人出廷を拒んだ、ということらしい。
 やれやれ。なんなんだ?この裁判。
 通信社も余計なことをする。幹部でも主犯格でもない、こんな証人に手紙を送って、どうするつもりだったのだろう。相手は、自分の現住所が知れていることに、家族共々かなり驚いたようだ。
 とはいえ、証人もどういうつもりなのだろう。確かに、罪は償ったかも知れない。刑期を終えて社会復帰している。ひとりの一般社会人に戻ったかも知れない。だけど、人には消せない過去もある。オウム事件というのは、一般社会に教団組織が攻撃を仕掛けた事件でもある。罪を償うにあたってあったはずの「反省」という言葉は、その後の生き方にも通じるものではなかったのかな。オウムという組織に所属していた自分を、どう精算したつもりなのだろう。もう刑期は終わった、自分には関係ないで済むものなのかな。
 地下鉄サリン事件では、あの日、自身も被害に遭いながら、それでも同じ車両に乗り合わせていて、亡くなってしまった人の様子を悲愴な表情で証言する、まったく教団とはなんの関係もない普通の人たちの姿があった。当時を振り返るにあたっては、涙を流して言葉に詰まる一般女性だっていた。辛くても、社会人として責任を果たすとは、そういうことなんじゃないのかな。
 そこへいくと、この裁判は証人を隔てる「衝立」(遮蔽板)の登場が多すぎる。権利とか人権を主張することは、とても大切なことだけど、そればっかりを色濃く主張し過ぎて、他人を振り返らない、そして近隣との混乱を引き起こしていた、あの頃のオウム真理教の信者の姿と、どこか色褪せて見えないのは、気のせいだろうか。
 この日の証人の出廷拒否に至った経緯を、弁護人は「平田被告の裁判に不利になる」と強く主張していた。だけど、それもどうなんだ? 17年も逃亡した果てにいまの裁判がある。指名手配がされたあの頃に出頭していれば、こんな「不利」になる事態もなかったんじゃないのかな。自業自得というのも、こういうことを指すんじゃないのかしら?
平成のヒモ男平田信2 平田信被告 

 結局、この日は、出廷予定だった証人の1997(平成9)年当時の裁判で行われた被告人質問の記録を、ふたりの弁護人が掛け合いで再現することに。終了は午前11時55分。約2時間。さすがに裁判長も再現が終わると「ご苦労様でした」と声をかけていた。
 平田被告に有利な証言を引き出したいのならともかく、当時の記憶を確認するのなら、この調書で十分なのでは? 証言に時間の壁が障害となるのなら(実際に他の証人では、時間の経過が記憶を混沌とさせている)、わざわざ出廷したくない証人を呼び出す必要もないんじゃないかな。記憶はより事件に近いほうが正確のはずだし、井上嘉浩死刑囚のようにまた違うことを言い出して混乱させる奴もいるくらいだし……。
 いったい、なんなんだ? この裁判!?
 因みに、冒頭のアダモの名曲『雪が降る』(日本語詞・安井かずみ)は以下のように続く。

雪は降る あなたはこない
雪は降る 重い心に
むなしい夢 白い涙
鳥は遊ぶ 夜は更ける
あなたはこない いくら呼んでも
白い雪が ただ降るばかり

 本当に公判終了後の裁判所の外には、白い雪がただ虚しく降るばかりだった。




オウム裁判傍笑記http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094026979
 虚しい夜に
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プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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