復刻『青ちゃん新報』平田信被告って、黙秘してたんだ!……出頭したのに?

復刻!青ちゃん新報2電子版

へぇ〜!!
平田信被告って、
取り調べで「黙秘」してたんだ!
……出頭したのに!?
 19日午前10時から東京地方裁判所第104号法廷で開かれた平田信被告の公判で、平成23年12月31日にわざわざ潜伏先の大阪から警視庁に出頭してきた平田被告は、直後の取り調べで「黙秘」していたことが明らかになった。
 この日、行われた被告人質問で、弁護人が平田被告に、最初に逮捕された仮谷事件の取り調べのあと、再逮捕されたいわゆる爆発物事件、火炎瓶事件について、「取り調べで全てを話しているか」と尋ねたところ、平田被告は、
「いえ、全ては話せませんでした」
 と、きっぱり。その理由として2つ挙げている。そのひとつが検察官への不信。
「仮谷事件の供述調書を作成して、自分で確認して、自分のいった言葉が変換して使われていた。『こんなこと言ってないんで、ここ変えてください』というと、検事さんは『いいじゃない、意味は同じなんで』といって訂正に応じてくれない。それでもまだ抗議をしていると、『どうして、そんなところにこだわるかなぁ〜』といって、不信が作られました」
 そんな取り調べがあったのが平成24年1月17日か18日頃。その模様も含め、検察官の取り調べ状況は全てDVDに録画されているという。
 それともうひとつの理由。
「爆発物事件と火炎瓶事件があって、そのあとに地下鉄サリン事件がある。時系列でいうと、あとの地下鉄サリン事件を取り調べでいきなり持ち出されてびっくりしまして」
 言うまでもなく、平田被告は地下鉄サリン事件では逮捕も起訴もされていない。
 で、それに驚いた平田被告が弁護人に相談したところ、
「黙秘することにしました」
平田信2
取り調べでの〝黙秘〟を語った平田信被告
 
被告人質問はじまる
 平田被告に対する被告人質問は、週明けの月曜日17日からはじまっていた。まず弁護側が尋問に立ち、オウム真理教と出逢った経緯から、入信、出家、教団内での境遇などからはじまって、起訴されている3つの事件について、裁判のなかった昨日を空けて、今日も引き続き平田被告の弁護側の質問が続いていった。
 そこでの印象をひと言でいうのであれば、被告人のどこからともなく醸し出す〝軽さ〟だった。
 それは、彼の淡々とした語り口にもあったのかも知れない。場慣れしたお役所の受付係のようにすたすたしゃべる。だけど、それだけではない。話の内容にもある。まるで当事者ではなく、他人事を話しているようなのだ。
 例えば、およそ17年に及ぶ逃走生活(と、いうより潜伏生活、いや、もっとハッキリいれば究極のヒモ生活)を支えた女性と、教団内で出逢った〝キリストのイニシエーション〟の監督では、違法薬物を使用していただけに死亡者も出ているのだが、
「最初の2名は、私が(監督役に)入る前、そのあとは3名ほどが亡くなったと聞いています。私が入った期間にはないです」
 と飄飄と語る。……でも、そんなに人が死んでいたら、それこそ大騒ぎだろう!
 仮谷事件についても、仮谷さんの妹さんの名前を聞いた時も、
「下世話な言い方ですけど、名前が年寄り臭くなく、未成年の女性かなと。麻原が未成年の女性を連れてきてはべらかせていたから、未成年で美人かなと思いました」
 で、現場に向かったところで、教団のワゴン車の後ろについていた乗用車に荷物を積み込んでいたら、たまたま誰もいなくなって、仕方ないから自分が運転席に乗り込んでそのままでいたら、女性(未成年で美人)を家族から救出するはずが、いきなり目の前で男性をワゴン車に押し込むのを見て、びっくり!
「なんなんだろうと、ぼうっと前をみていました。自分を落ちるけるために」
 だから、事前に拉致の話もなければ、役割分担の謀議もない、と事件を仕切っていた井上嘉浩や中村昇とは真っ向から食い違う主張をするのだ。
 そんな調子で、この日も被告人質問が続く。
 爆発物事件は、杉並の一軒家で横になってウトウトしていると、林泰男に「もう帰っていいよ」と声をかけられた。で、起き上がって、隣の部屋に行くと、のちの地下鉄サリン事件の実行メンバーと井上が何か話をしている。井上の斜め後ろに立って、井上の手にしていた紙を何気なく覗き込んだところで(そこには地下鉄サリン事件の運転手役の名前があった)、振り返った井上と目が合った。「オレ、もう帰っていいんだよね」確認をすると井上が「うん、いいよー」といった直後にやや間があって「その前に、ちょっと付き合って」と言われた。コンビニかファミレスに行くのだろうと思って付いて行って、見ているように言われた現場のマンションの前で車を停めて待っていると、井上が玄関に入って出ていった。で、いきなり爆発。
「まず、わりと乾いた音、パーンという音がしました」「2〜3秒おいて、わりと大きな音、ドーン!と爆発しました」
「そりゃ、もう、びっくりしました」「思わず、わっとのけぞりました」
 びっくりしてその場を離れた平田被告は、事前に何も聞かされていなかったことに、「井上に文句のひとつも言いたい気持ち」で杉並の一軒家に戻ると、玄関を上がって廊下の向こうにいる井上のもとに「あの野郎!」とばかりにズンズン歩いていって、
「あれ、なによ!」
 と、文句を言いかけたところで、談笑していた井上はすっと手を挙げて、平田被告を制止し、「大丈夫。人を傷つけることが目的でないから」とひと言。それで、
「虚を突かれたというか、一瞬、えっ!と思って、動きも気持ちも止まってしまいました」
「一瞬、頭が真っ白になったというか、怒りあり、動揺あり、緊張あり、驚きありで、心の振り幅が大きい。緊張から安心みたいに、井上の言葉を素直に受け入れてしまった。あ、そっか、人を傷つけるつもりじゃなかったのか、と……」
 で、気が抜けたようなところで、「このあと青山をやったら完璧だ!」という井上につられて、南青山にあった東京総本部道場へ火炎瓶を投げ込みにいっしょに行っちゃった、というわけ。
 そして、弁護側の被告人質問の最後に、取り調べ状況について訊かれ「黙秘」の事実を明らかにしたのだった。

『小さな幸せ』に徹底抗戦!
 さあ、ここから検察側の尋問がはじまる。取り調べの調書にあることと、これまでの被告人質問で、法廷でいうことと違うものだから、検察はそこのところをネチネチ突いてくる。だけど、決定的な詰めにどこか欠ける。そこで、最後に年配の検察官が立った。ずっと以前からオウム裁判の公判を担当していた人物で、黒縁の眼鏡をかけ、下あごが器用に動くしゃべり方をする、まるで『サンダーバード』の人形のようだ!
 このサンダーバード検事(以下、バード検事)が、冒頭の件について尋問した。

バード検事「1月17日の調書で、言葉が変換されていたといいましたね。どこの部分ことですか」
平田「どこの部分と言えません」
バード検事「1月17日は取り調べがないから、1月18日付けの調書になるが、あなたがなぜ出頭したかという理由の調書で、言葉にこだわったのではないですか」
平田「たぶん、そうだったかもしれません」
バード検事「平成24年1月18日付調書にある、いっしょに暮らしていた女性との関係で『小さい幸せかも知れないけれど、いっしょに暮らしていたい……』といった、この『小さい幸せ』という言葉にものすごく反応したのではないですか」
平田「私は、そういうことを言ってないのに、どうして入れているのか、と」
(え?事件とは関係ない部分なの!?)
バード検事「その時に、小さい幸せについて『いろんなものが交錯していて、いまうまく言えない、でもそれで結構です』と言って納得したのではないですか」
平田「そのやりとりに凄く疲れていて、そう言ったと……。でも、それだけでないと思います」
バード検事「それだけでないなら、言って」
平田「いま、思い出せません」

 つまり、究極のヒモ男だった平田被告は『小さな幸せ』という、事件とは直接関係のない言葉にこだわって、検察官との信頼関係を失っていったというのだ。それで黙秘に走る。
 取り調べの録画映像はすべて見た!というサンダーバード検事。

バード「45分間、あなたも検察官もひと言も話さないことがありましたね」
平田「ありました」
バード「どうして率直に事情を話さなかったの。言わないと伝わらないのでは」
平田「黙秘の理由を黙秘したんです」

 この日の最後に裁判長も確認する。

裁判長「確認ですけど、『小さい幸せ』に違和感は、あることはあったの?」
平田「それはありました」
裁判長「その他にもそうしたことはあったのですか」
平田「今すぐ、ぱっとは出てきません」

 わざわざ出頭して黙秘する。『小さな幸せ』にこだわって。検察官との信頼関係を失う。
 そもそも、国松警察庁長官狙撃事件の犯人に仕立てあげられることを怖れて、逃げ回っていたんじゃなかったの?そんな捜査機関を本当に最初から信用していたのかな?
 だいたい、出頭の理由に東日本大震災に不条理を感じたからじゃなかったの?非のない人たちが大勢亡くなった。そこにオウムの被害者の姿を重ね合わせたから、けじめをつけるつもりだったんじゃないの?
 で、『小さな幸せ』が気に食わないから黙秘?そりゃあ、ひとそれぞれこだわりや思いはあるだろうけど、人の死というものと真摯に向き合って、自分の犯した罪を受け入れようというのなら、そこで黙秘なんてするかな?
 なにかそこにオウム特有の身勝手さを感じてしまうのは気のせいだろうか。
 出頭して黙秘だなんて、それが被告人の軽さなのか、それともご都合主義の一端なのだろうか。
 いっしょに逃げた女が見て、そして惹きつけられたという彼の「誠実さ」とは、いったいなんなのだろうか。
 被告人質問はまたまだ続く。その間に、彼の正体も見えてくるのだろうか。




フクシマカタストロフ カバー・帯 http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163900148
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プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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