小児甲状腺がん多発にみる国家的犯罪

『週刊現代』掲載原稿について!
 先週と今週の2度に亘って、
 『週刊現代』で福島県の小児甲状腺がんの問題について書いています。

 先週号(『週刊現代』6/14号)では福島県内の様子、それも福島県が実施する甲状腺検査によって「甲状腺がん」と診断され、摘出手術を受けた親の姿や、子どもの健康をいまも心配してやまない親たちのこと、
 そして、福島県の実情から、単純に浮かんできた疑問を提議して、
 今週号(『週刊現代』6/21号)につながっています。

 その疑問とは即ち、

・日本では100万人に1〜2人がなるとされる小児甲状腺がん。それが、東日本大震災から3年が経った福島県では、震災当時18歳以下だった子どもの50人に甲状腺がんが見つかり(今年3月末現在)、既に摘出手術を受けています。その頻度は6000人に1人と、チェルノブイリ原子力発電所の事故後に急増した1万人に1人の割合を越えていること。

・甲状腺がんにはいくつかの種類がありますが、いま福島で見つかった50人の小児甲状腺がんのうち、49人が「乳頭がん」であったこと。チェルノブイリでは「放射線誘発性の甲状腺がんはすべて乳頭がんでした」と報告されています。

 でも、福島県では、これは原子力災害によるものではないとしています。

 日本やチェルノブイリでの小児甲状腺がんの頻度や、
 チェルノブイリではすべてが「乳頭がん」であったことは、
 山下俊一という、福島県「県民健康調査」検討委員会の座長も務め、いまも首相官邸の「原子力災害専門家グループ」に名を連ねる福島県立医科大学副学長、長崎大学理事・副学長が、震災の発生以前に公言していることです。
(『日本臨床内科医会会誌・第23巻第5号』「放射線の光と影:世界保健機関の戦略」より)

 こうした甲状腺検査初期からの経緯や事情については、既に刊行されている拙著『フクシマ カタストロフ 原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)に、山下論文と本人のコメントといっしょに、チェルノブイリで起きた健康被害の実情も含めて、詳しく書いてあります。

 それでも、福島県では甲状腺がんの多発を原発事故由来ではなく、検査技術の向上によってがんの発見が増えたものとしているのですが、だとしたら、もうひとつの疑問。

・福島県に限らず、可及的速やかに摘出手術が必要な子どもたちが、同じ頻度で全国に潜在していることになります。これはこれで、原子力災害とは別に重大な国家的危機に直面していることになるはずです。

 こうした疑問から、いまのフクシマにおきていることを専門家の見解を交えて検討しているのですが、
 今週号(『週刊現代』6/21号)は、まだ店頭に並んでいますので、詳細は控えます。そっちを読んでください。
 ただ、その紙面で提示している資料は、ネット上からたどったほうが早いと思いますので、ここに補足しておきます。

 それは、ベラルーシのゴメリ州における小児甲状腺がんの発症を年齢別、年次別にまとめたものです。
 『内閣府 原子力委員会』のHPからたどることができますが、
 ここにアドレスとリンクを載せておきます。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/bunka5/siryo5/siryo42.htm
※下の表です!
(『内閣府 原子力委員会』2000年2月29日「長期計画策定会議第五分科会(第5回)」資料4‐2「チェルノブイリ原発事故後の健康問題」)
 これもやはり山下俊一・首相官邸「原子力災害専門家グループ」メンバーの提示したものですね。

 これと比較できるように、いまの福島県の現状についてもリンクしておきます。

http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/65174.pdf
※4頁目に注目です!
(『福島県』2014年5月19日 福島県第15回「県民健康調査」検討委員会 資料2 県民健康調査「甲状腺検査」の実施状況について)

 福島県が、いまの甲状腺がんの多発について、原発事故由来でないとする理由のひとつに、
「福島でがんが見つかっている年齢層は10代と高い。チェルノブイリでは、もっと低年齢に発症が見られた」
 とする主旨のものがあります。
 『報道ステーション』が今年3月11日放送で、やはり福島県の小児甲状腺がんの多発について取り上げたところ(当時は、まだ「33人」とされていた)、すぐに環境省や福島県がこれを理由に反論、抗議していました。

(環境省)
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/hodo_1403-1.html

(福島県)
http://fukushima-mimamori.jp/news/2014/03/000131.html

 ですが、チェルノブイリでも小児甲状腺がんのアウトブレイク(異常多発)がはじまる事故後4年までは、いまのフクシマと同じように10代に増加傾向を示していたことが、上記の原子力委員会が提供するベラルーシの資料から読み解くことができます。
 一目瞭然とは、このことですね。
 こうして国や福島県の見解に矛盾や疑問を呈しているのが、『週刊現代』の原稿ということになります。


そこで驚いていること!
 さて、そこで、なのですが、
 ぼくがいまとても驚いている、もうひとつ別のことがあります。

 『週刊現代』今週号の発売は、昨日(月曜日)だったのですが、
 いまもって、どこからも抗議や反論が出ていないことです。

 『報道ステーション』の例からもわかるように、あれだけ報道には神経を尖らせていたくらいなのに、なにもクレームすら来ない。

 ぐうの音も出ない(つまり、反論もできない)ほどに、追い詰められてしまっているのでしょうか。
 それとも、『週刊現代』なんてどうでもいい、相手にする価値もない、ということで、無視されているのでしょうか。
 反論ができないから無視するのだとしたら、これはよっぽど質(タチ)が悪い。

 今週号で、私見としても書いたのですが、
 過去の研究発表や知見を無視して、いままったく違う見識を公言していること、
 それも官邸をはじめ政府機関や自治体の中にそうした人材がいて、措置を講じていることは、
 かつての薬害エイズ事件の例を出すまでもなく〝犯罪者〟(刑事被告人)を行政府が育んでいることになるのではないでしょうか。

 そうまでいわれて、黙ってしまうなんて、
 犯罪事実を認めているようなものではないでしょうか。

『週刊現代』に掲載された記事は、国立国会図書館に残ります。
 既に刊行されている拙著『フクシマ カタストロフ』も同様です。
 黙殺するだけで済むような話なのでしょうか。
 これまでの判断が間違っていたのなら、それを認めることも必要のはずです。

 そうでなくても、事故後4年の甲状腺がんのアウトブレイクを認めながらも(原子力委員会の提供する上記ベラルーシの資料からも読み取れます)、いまだに福島県外、汚染の広がった関東首都圏の事前対策がまったくとられていないことは、これも国家の犯罪行為のひとつといえるのではないでしょうか。



フクシマカタストロフ カバー・帯  http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163900148
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR