集団的自衛権と残留日本兵と過ぎゆく時間

 いくつか積み重なっていた懸案がようやく一段落。同時期の締切に加え、まったく違うことを考えなければならないというのも辛い。それにこのところ、身体の調子もよろしくない。なんだか疲れやすい。他人からも「顔色が悪い」「疲れてますね」と指摘される。放射線の浴びすぎかしら。それとも単なる身体の衰え。あるいは鬱か……。
 こう見えても(と、誰がどう見ているのかわかりませんが)、チェルノブイリとフクシマの両方の放射線を浴びた数少ない人間のひとり。原爆症では「ぶらぶら病」と呼ばれる無気力症状が報告されているし、チェルノブイリでも被曝した人たちに「疲れやすい」「イライラする」「モチベーションや感情がコントロールできない」という症例報告も多い。
 左眼の瞳孔の脇の白眼に、もうひとつ瞳孔ができたように赤い丸い染みができたのは先週の土曜日のこと。びっくりして眼科に急行すると、その部分の細い血管が切れて出血している、との診断。人によってはよくあることで、これからも繰り返す可能性が高いとのこと。しかも、ついでながらドライアイとの診断もくだる。眼が老化している証。加齢と共に眼球の白眼にも皺が寄ることも教えられた。つまり、「目玉おやじ」にも皺がよることらしい。
 うーん……。もう、やんちゃもできなくなったということか。いったい、これまでの人生ってなんだったのだろう? これまでのキャリアや、いまの自分の置かれた現状を振り返ってみる。喪失感も加わって、だんだんと憂鬱になって来る……。モチベーションが上がらなくなる。感情も沈んでくる。そうやって、堂々巡りがはじまる。やっぱり鬱か。それとも衰えか。生きるって、どういうことなんだろう? 人生って、いったい……。
 そんな時に、この本の校了作業をしていたのも、また運命なのかも知れません。
 男の生き様を(そして、それを支えた女の生き様もいっしょに)、あらためて考えさせられました。
 小学館文庫から再文庫化して、来月5日に刊行されます。

『帰還せず〜残留日本兵戦後六〇年目の証言〜
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094060744

 1945(昭和20)年の夏の敗戦。しかし、戦地の日本兵たちの中には、帰国を拒んだ日本兵たちがいました。戦争の終結、敗戦を知らなかったのではありません。自らの意思で帰還を拒んだのです。
 なぜ、あなたは帰らなかったのですか‐‐?
 2005(平成17)年、戦後60年の夏。その理由を尋ねる旅に出ました。ぼくも戦争を知らない世代です。そこで耳にした彼らの生き様と戦争体験。当時、東南アジアの各地に存命だった残留日本兵14人の証言と、それを巡る旅の記録です。
 来年、戦後70年の節目を迎えるにあたっての刊行です。

 集団的自衛権が議論される中にあっても、まずは読んで欲しい一作です。
 かつて日本が歩んだ戦争とはどういうものだったのか。
 生き延びてなお、祖国に帰らなかった日本兵たちのそれぞれの理由。
 そして、その生き様です。

 来月5日、書店に並びます。


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プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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