食品農薬混入事件とオウム真理教

アクリフーズ農薬混入事件に懲役3年6月
 アクリフーズ農薬混入事件で、冷凍食品に農薬を混入した群馬工場の元契約社員に懲役3年6月(求刑懲役4年6月)の実刑判決が言い渡されました。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014080802000247.html
http://www.huffingtonpost.jp/2014/08/08/poisoning-case_n_5661014.html

 中国(中国人)に限らず、日本(日本人)でも、こうしたモラルハザードは起こりうることであって、食の安全が脅かされるということですね。
 まさに国境はない。困ったものです。


アクリフーズ中国工場の秘密
 アクリフーズ(現マルハニチロ)といえば、かつて同社の中国工場の内部を取材したことがあります。
 そこでも、今回の事件で農薬が混入された冷凍ピザを作っていました。
 それも、中国人が「臭い!」と嫌って食べないチーズを使って。中国人の手作業で。中国の市場を狙って。
 当時は、北京オリンピック(08年)の前で、かつての日本の高度成長時代のように急速に中国が経済発展をしていく最中。
 冷凍食品といっても、電子レンジがようやく中国沿岸部で普及しはじめていた頃でした。
 その勢いにのって、西洋の乳製品が中国に浸透していくことに期待していました。
 ちょうど、アクリフーズの前身である雪印食品が、高度経済成長期に躍進したように。
 それでも、中国の人たちに「臭い!」といって食べない買わない食品を作らせるという、ちょっと考えてみれば凄まじいことをしていたものです。

『中国食品工場の秘密』『中国食品工場の秘密』
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094082722

 そんな現状が、先月、地元メディアの報道で明らかになった上海の食品加工工場のモラルハザードにも繋がっているのかも知れません。
 ハンバーガーやチキンナゲットなんて、自分たちが食べるのではない、よその誰かが食べる、いや、ひょっとしたら〝食べもの〟という認識すらなかったのかも。中国の国土や人口に比べたら、まだまだマクドナルドの普及なんて浅いものですし、決して庶民の味でもなんでもありませんから。
 そんな現実感覚の喪失や、他者への想像力の欠如が、農薬混入事件をはじめ、いろんな事件に繋がっていくのでしょうね。

 ただ、当時のアクリフーズの中国工場は日本人も常駐して、中国人に馴染みのないものだっただけに、品質管理や指導も徹底していました。
 その模様は、奇遇にも現在増刷販売中の拙著『中国食品工場の秘密』に載っています。


農薬混入事件とオウム真理教の接点
 奇遇といえばもうひとつ。
 今回の事件を「思慮分別に欠ける悪質な犯行」として、被告人に実刑判決を言い渡した前橋地裁の野口佳子裁判長。
 実は彼女、地下鉄サリン事件などを引き起こしたオウム真理教の井上嘉浩元被告の一審で、無期懲役判決の判決文を書いた人物(当時は合議体の右陪席)。
 井上元被告は、その判決公判で「無知懲役」を言い渡された瞬間、証言台に立っていられないほど泣き崩れたことを、いまでも記憶しています。
 ただ、井上元被告はその後の控訴審で無期懲役を破棄され、死刑に。そのまま確定しています。

井上嘉浩2 無期懲役が死刑になった井上嘉浩

 今年5月にあった菊地直子被告の裁判で証言に立った井上死刑囚は、自らを「いまでも童貞」と認めるいわば〝童貞の死刑囚〟。
 いまは、再審の準備を進めているようですが、最初の判決で死刑を免れたことは、彼にとってもかえって残酷だったような気がします。
 その模様は、こちらの書籍に詳しいです。


オウム裁判傍笑記『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784094026979

私が見た21の死刑判決『私が見た21の死刑判決』(文春新書)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166607068
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/1666070600000000000H

 いやはや、まったく関係ないと思っていたことが、こんなところで結びつくなんて。
 先のことはわからないものです。


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プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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