ロビン・ウィリアムズと『フィッシャー・キング』とハットリ・マサル

あ!ロビン・ウィリアムズが死んじゃった!
 ロビン・ウィリアムズさん死去。63歳。自殺の可能性が高いとのこと。重度の鬱状態にあったというし、薬物依存やアルコール中毒でリハビリを繰り返していたというし……。

http://www.asahi.com/articles/ASG8D2QT9G8DUHBI00D.html
http://www.cnn.co.jp/showbiz/35052233.html

 『フィッシャー・キング』(91年)という映画が好きでした。いまでもとても好きです。ジェフ・ブリッジスと共演した名作。アカデミー賞(主演男優賞ノミネート)は逃しちゃったけど、ゴールデングローブ賞(主演男優賞/ミュージカル・コメディ部門)を受賞。因みに、この作品で、マーセデス・ルールがアカデミー、ゴールデングローブ両助演女優賞を受賞しています。あまり目立たなかったけど、〝いい女〟に見えたしなあ……。
 この作品の役柄と彼の人生も、どこかダブっていたのかも。そう思うと、ちょっと哀しくなります。

 やはり彼がアカデミー主演男優賞にノミネートされて獲れずに、ゴールデングローブ主演男優賞を受賞した作品に『グッドモーニング,ベトナム』(87年)も。
 彼がDJとして最初に叫ぶ名調子「ぐーーーーーーーど!モーニン!ベトナム!」は、彼が大人になったピーターパン役を演じた、スティーブン・スピルバーグ監督作品『フック』(91年)で思い切りパロディーにされているのを観て(映画の舞台のネバーランドに朝が来ると、海賊のひとりが大きなメガホンで「ぐーーーーーーーど!モーニン!ネバーランド!」と叫ぶ)、映画館で独り大笑いした記憶があります。いっしょに隣で観ていた女の子からは、「あなただけ、笑いのポイントがずれている」と、怪訝な視線を送られました。何がおかしいのか、あとでいくら説明してもまったくわからなかったようです。
 いずれにせよ、それだけ米国にインパクトを与えていた役者さんだったのでしょう。


独りで苦しむということ
 この映画『フィッシャー・キング』が好きになった理由はいくつかありますが、そのうちのひとつ。
 コミュニケーションの存在と虚無について探究されていることがあります。
 あえてストーリーには触れませんが、作中で出逢ったロビン・ウィリアムズとジェフ・ブリッジスが、それぞれに独り言をいうシーンが出てくる。そうすると、それを聞いた相手が「誰に向かって話しているの?」と問いかける。助演女優賞を獲ったマーセデス・ルールも、食事の約束を破られ独りで怒りをぶちまけていると「あら?私は誰に向かって話しているのかしら?」と、自分の声に気付くシーンが出てくる(確か、そんな記憶です)。深夜ラジオのDJ役だったジェフ・ブリッジスの発言から、悲劇が起きて運命の糸が絡まりはじめるのですが(あ、ストーリーを言っちゃった!)、言葉を発することとはなにか、意思を通わせることとはなにか、いまでも心に残る作品です。
 それはきっと、コミュニケーションツールの急増した現代においても通じるところもあるはず。いや、だからこそ、一歩通行の言葉は増えているのかも知れません。
 その一方で、ロビン・ウィリアムズという人はその原点から抜け出せることができなくなって、独りの世界に潜り込んじゃったのだろうな。


「ハットリ!聖杯を持ってきてくれ!」
 それから、もうひとつだけ。
 この作品は、先に観ていた服部勝くん(あえて実名)という大学の友人に「アオヌマぁ〜、あの映画、面白いよぉ」と勧められて観た記憶です。
 早稲田大学で演劇のサークルに所属していたハットリとは、よく映画や小説、戯曲の話で、侃々諤々と多感な時期を盛り上がっていました。
 この作品についても、ああだこうだ話したな……。彼は、これと同時期に公開された『ポンヌフの恋人』が、とってもお気に入りで……。
 あ、そういえば、あいつに貸したサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』の日本語版、まだ返してもらってないや!
 彼とは、大学を出てからそのまんま。消息もわからない。
 タモリと村上春樹の嫌う名古屋の出身。確か実家は魚屋だったように思います。

「服部勝くん!連絡乞う!」「求む、消息」

 それと……、

「我に、聖杯を!」

 そう呼び掛けたところで、独り言のようにこれも虚空の世界を彷徨うだけかも知れませんね。
 求める人に、こちらの思いは伝わらない。
 今も昔も、それは変わらないのかも。

 ロビン・ウィリアムズがみせた生きることの苦しみ。
『フィッシャー・キング』お薦めです。


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【フィッシャー・キング】R・ウィリアムズ追悼シリーズ

{{{[http://eiga.com/movie/48589/ eiga.com 作品情報 『フィッシャー・キング』]}}} {{{: ■解説:落ちぶれた元人気DJとホームレスの男が、その出会いにより互いの人生を変えてゆくことになる、都会のファンタジー。監督は「バロン」のテリー・ギリアム、製作は「ベビーシッター・アドベンチャー」のデブラ・ヒルとリンダ・オスト、脚本はリチャード・ラグラヴ...

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はじめまして。

検索していて偶然拝見しコメントいたしました。


私はロビンといえばフィッシャーキングなので
ほんとうに残念で仰る通り
この映画の役柄とダブります。

なんども観て 彼のせつない表情が
忘れられないです。
お分かりになるかお恥ずかしいのですが
あのずっと思っていた女性に食事の帰路、心を打ち明けるシーンは
私にはドンぴしゃで大号泣でした。
そして全体の心理描写は何度見てもひきこまれます。
それぞれが訴えるようなセリフもドキッとします。
(ごめんなさい 内容を書いてしまって。)

ちなみに
フックもすきです・・・

現在ニュースではあれこれ私生活が明るみになってますが
知らずに申し上げると個人的に、ただああいう
お父さんが欲しかったなぁという感じです。

すみません長々と。

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マイブログに、リンク&引用、させてもらいました。
不都合あればお知らせくださいませー
なにとぞ、ヨロシク!
プロフィール

あおぬまよういちろう

Author:あおぬまよういちろう
【青沼陽一郎】
「ジャーナリスト」(週刊文春・週刊新潮)と呼ばれたり、
「ノンフィクション作家」(週刊現代)と呼ばれたり。
 日本文藝家協会・会員名簿には「作家・ジャーナリスト」とある。
 著書に『池袋通り魔との往復書簡』『オウム裁判傍笑記』(小学館文庫)『食料植民地ニッポン』(小学館)『裁判員Xの悲劇』(講談社)『私が見た21の死刑判決』(文春新書)『帰還せず-残留日本兵六〇年目の証言-』(新潮文庫)など。
 映像ドキュメンタリーに『虚像の神様〜麻原法廷漫画〜』シリーズ。

ぜぜ−ひひ【是々非々】
 よいことはよい、悪いことは悪いと公平な立場で判断すること。
「 是を是とし非を非とす る、之を知と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う」『荀子』修身より

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